かばんのなかみ 沼谷香澄
オオサンショウウオを飼っています
ねずみ色の人造大理石のような色と模様をしています
食器棚の奥行きよりすこし短い体長ですが
尻尾はそれよりうんと長くて
特製の細長い蓋つきパイレックスのなかで
尻尾をくにゅと折り畳んでいます
尻尾はいつも左(私が顔を向き合わすと右)に
ゆりゆりとしています
目がうんと離れていて
口は歯が無くて、いえ
在るかも知れませんが見えないので噛まれても平気なように見えますが
噛ませたことはありません
瞼がないのでせつないです
鱗がないのでうざいです
一日二回、朝起きる前と夜寝た後に
食器棚のいちばん下の段を開けて
引き出して
水を交換して餌をやって顔を見ます
とくべつてんねんきねんぶつなので
陽に当てると埴輪になってしまうのです
今朝
オオサンショウウオの顔を思い出しながら
食器棚を開けたら
いませんでした
そしたら
目を抜かれて埴輪になったのは
わたしのほうでした
いつもは「いってきます」という夫が
「いってくる」とおかしなあいさつをして
でていきました
かばんのふくらみがいつもとちがうきがしましたが
きのせいでしょう
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