目を開ける前から
わたしに異物がはいりこむ
からす
鳴いてる
三声
そして三声
窓へ目を向ければ
からす
朝日をうけてる
向かいの屋根のてっぺんに
一羽
つまり
目と鼻の先にいる
わたしは
夜来の寒気を
振り払えないまま
床に
積みあがってる
黒い
光ってる
光って黒い
目がくちばしが
堅実な
からす
あれが欲しい
朝のわたしは行動的で
からすをつかまえて洗う
有機溶媒たっぷり
赤いバケツつやつや
黒いからすとろとろ
からすはみんなきれいにとけてしまった
しっぱい
黒だけ欲しかったのに
まあいいか
溶けた黒をからすごと頭からかぶる
わたしの鋳型ができた
中は昼下がりの暑さで
氷のように柔らかい
わたしとろとろ
なに色かは見えないけれど
だいぶ小さくなったようだ
でも大丈夫
型が残っているから
冷えれば元に戻る
初出:おそらくnifty-serveの「現代詩フォーラム」、おそらく1999年以前